弁護士の技術的裁量
技術的なことは弁護士にお任せください
たとえば、病院で手術を受けるとき、どのような手術をするか、事前に説明を受けると思います。時には、複数の手術方法から、患者が一つを選ぶこともあります。しかし、具体的な手術の技法については、患者が医師に具体的な指示をすることはありません。
弁護士に依頼するときも、これと同じことが言えます。
「訴訟を起こすか、起こさないか。」、「和解するか、和解しないか。」といった選択肢については、依頼者の方に選択していただきますが、実際に訴訟を起こすことになったとき、具体的に、どのような書面、どのような証拠を提出するかは、弁護士の技術的裁量事項です。
たとえば、「相手が応じない可能性が高くても、〇〇を提案をして欲しい」とか、「無駄と分かっていても、この証拠を提出して欲しい」といったご要望には応じられない場合があります。これは、「弁護士は、事件の受任及び処理に当たり、自由かつ独立の立場を保持するように努める。」(職務基本規程20条)という形でルール化されています。
和解交渉について
和解交渉にあたり、ご理解いただきたいのは次の2点です。
- 些細な言動が脅しと受け取られる
-
特に、お金を請求されている側というのは、些細な言動を簡単に「脅し」だと理解します。
たとえば、「和解交渉が決裂すれば訴訟になる。」というセリフは、弁護士が介入している以上当然のことなので、「脅迫」とは言えませんが、相手が「脅し」と受け取ることは珍しくありません。
相手に「脅し」と受け取られると、警戒心や反発心を招き、早く終わる事件でも、長くかかってしまう原因になります。
「強く言って欲しい」という要望を受けることもありますが、逆効果のことも多いので、弁護士が培った専門技能にお任せください。 - 相手が飲む可能性のない提案はするべきではない
-
相手が飲む可能性が低い提案は、それ自体、するべきではありません。
「言うだけ言ってみて、ダメだったら考え直す。」というのは、良い結果にならないことが多いと言えます。
「話合いの余地がない」という印象を与えてしまい、相手が弁護士に依頼したり、訴訟に移行したりする可能性が高くなるからです。
訴訟(裁判手続)について
訴訟については、次の2点をご理解ください。
- 裁判官は書面を全部読んでくれないかもしれない
-
裁判官は、出された書面や証拠は、全部読まなければなりません。確かに、それが建前です。
しかし、実際は、裁判官は、非常に忙しく、多数の事件を担当していますので、大量の書面を出しても、全部目を通してくれるとは限らないというのが実態です。仮に、1度くらいは目を通しても、無意味な書面と判断されれば、読み飛ばされてしまうでしょう。そのため、弁護士が「無意味」と判断した書面や証拠を出すと、その分、重要な部分が希薄になり、事件の焦点が曖昧になって、裁判官が判断を間違える原因になると言われています。訴訟では、重要な点に絞って、主張立証を行うことが重要です。
- 裁判官は間違える
-
裁判官は間違えます。裁判所は、特に優秀な人材を裁判官として採用する努力をしていますが、裁判官も人間ですから、間違えることもあります。
重要なのは、裁判官が間違えないように誘導することです。そのためには、法律的に無意味なことを散発的に主張するのではなく、法律的に重要な部分に焦点を絞って、主張・立証する必要があります。「法的に無意味でも良いからとりあえず主張しておく」というのは、逆効果と言えます。
事件処理にかかる時間
事件によって異なりますが、基本的に、法律紛争の処理には時間がかかることが多いです。
たとえば、弁護士からの内容証明を受け取った場合、多くの人は、自分も弁護士に相談しようと思うでしょう。予約を取って、相談に行って、弁護士に依頼して、方針を打ち合わせるという過程を辿ることになります。つまり、相手に内容証明を送っても、相手が弁護士に依頼する場合、返事が来るまで、10日~2週間程度かかるのは、普通ということになります。そこから交渉を開始するわけですから、1か月以内に話がまとまれば早い方と言って良いでしょう。
話がまとまらなければ、そこから更に訴訟を提起しなければなりません。民事訴訟は、事件によって、審理期間が大きく異なりますが、被告が欠席する欠席判決を除き、特に短い場合(途中で和解が成立する場合)でも6か月、通常は、本人尋問までやると、10か月~1年程度かかります。事件によっては、1年以上になることも珍しくありません。
弁護士費用の解説
弁護士費用の種類
- 着手金
-
事件に着手する時に必要な費用(弁護士に対する報酬)
- ご依頼時に必要になります。
- 事件の結果に関係なく必要な報酬です。
- 追加着手金
-
一定の事由が発生したときに必要な追加の着手金
- 交渉から訴訟に移行したり、訴訟から強制執行に移行したり、ご依頼から一定期間が経過したとき等に発生します。
- 解決報酬金
-
一定の結果が出たときに発生する定額の報酬
- たとえば、離婚が成立したときに、「離婚」という結果に対して、定額の解決報酬金が発生します。
- 解決報酬金は、委任契約書に別段の記載がない限り、以下の成功報酬金とは別に発生します。
- 成功報酬金
-
解決報酬金とは別に発生する結果に比例した報酬
- たとえば、100万円の判決を取ったときに、100万円の〇〇%という形で発生します。
- 成功報酬金は、契約書に別段の記載がない限り、上野解決報酬金とは別に発生します。
- 日当
-
裁判所への出廷や出張などに発生する日当
- 日当は、当該事由が発生したとき、その都度、お支払いいただくものです。
- 一定回数以上の裁判所への出廷、尋問期日、面会交流への立ち会い、支部・県外出張等で発生します。
- 定額の実費
-
通常の事件処理をするのに必要な実費
- コピー代、郵便代、電話代、交通費など、通常の実費は算定が困難なので、定額で頂戴することがあります。
- それ以外に、以下の訴訟実費等が発生することがあります。
- 訴訟実費等
-
訴訟手続等、一定の手続を取る際にかかる実費
- 訴訟提起の際の印紙代、予納郵券代、調査嘱託、鑑定費用等、訴訟手続内で発生する実費です。
- 公正証書作成手数料や弁護士会照会費用等も、その都度、請求させていただきます。
日弁連の旧報酬基準とは?
日本弁護士連合会は、過去、弁護士の報酬基準を定めていました(旧報酬基準)が、平成16年に廃止され、弁護士報酬は自由化されました。
今でも旧報酬基準を参考に弁護士費用を定めている法律事務所がありますが、既に廃止から20年近くが経過し、旧報酬基準に捉われない法律事務所も一般的になっています。
弁護士費用のお見積りについて
当ホームページに掲示している弁護士費用については、原則的な内容であり、事案の内容に応じて、別途、お見積もりをさせていただくことがあります。また、料金は、予告なく変更することがあります。
弁護士費用のQ&A
- 弁護士費用は分割払いできますか?
-
原則一括払いです。ただし、債務整理事件は、原則分割払いとさせていただいております。
- 弁護士費用は相手方に請求できますか?
-
相手方には請求できません。ただし、不法行為に基づく損害賠償請求に限り、認容額の1割が認められます。
- 弁護士費用はどの法律事務所でも同じですか?
-
法律事務所ごとに異なる弁護士費用が定められています。
- クレジットカードや電子マネーは利用できますか?
-
当事務所では、クレジットカード決済には対応していません。銀行振込みでお支払いください。
委任契約の範囲
上訴・強制執行
地方裁判所で第一審判決が出た後、高等裁判所に控訴する場合、別途、委任契約を締結し、追加費用をお支払いいただく必要があります。高等裁判所の判決に対して、最高裁判所に上告する場合も同様です。
判決が確定しても、相手方が従わない場合、強制執行手続を取る必要があります。強制執行手続は、相手方の財産調査手続も含め、別途、委任契約を締結し、追加費用をお支払いいただく必要があります。
派生紛争
たとえば、会社に対する残業代請求をした結果、会社から、会社の備品を破壊したことに対する損害賠償請求を受けることがあります。このような派生紛争の処理については、追加料金をお支払いいただく必要があります。
また、相手方が異なる事件については、別事件となりますので、委任契約の範囲には含まれません。たとえば、夫との離婚事件をご依頼いただいた場合、夫の不貞相手に対する慰謝料請求事件は別事件となります。
弁護士倫理
利益相反の禁止
弁護士は、依頼者同士の利益が対立する事件を受任することができません。
つまり、片方の味方をするのが仕事だから、対立する両方から依頼を受けることはできないということです。
有利な結果を保証できない
弁護士は、職務規定上、有利な結果となることを請け合い、又は保証することができません(職務基本規程29条2項)。
もちろん、事件の見通しはきちんとご説明させていただきます。