過失による不貞行為
過失による不貞行為とは、結婚していると知らなかったことに過失(不注意)が認められる場合です。現在の法律では、過失であっても、不法行為責任を負い、慰謝料を支払う必要があります。
しかし、過失がなければ、慰謝料を支払う必要はありません。
「知らなかったとはいえ、不貞をしたのは事実だから」と考え、慰謝料を支払ってしまう人もいますが、本当に過失があったと言えるのか、一度は弁護士に相談してみるべきでしょう。
一般的な視点
過失が認められるためには、少なくとも、既婚者ではないかと疑うべきだった事情が必要です。一般的には、以下の点が考慮要素と思われます。
- 交際期間の長さ
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交際期間が長ければ、それだけ既婚者だと疑うべき事情に接する機会も多くなります。ただし、交際期間が長くても、巧妙に隠蔽されていれば、気付けなくて当然という場合もあるでしょう。
- 出会い方・共通の知人の存在
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マッチングアプリで知り合った場合など、既婚者だと知っている共通の知人がいないので、疑うことが困難になります。他方、社内不倫など、他の従業員や会社役員が、その人を既婚者だと知っている場合、疑える機会がある場合が多いと言えるでしょう。社内不倫の場合には、知らなかったということ自体が疑わしいと思われる場合もあると思います。
- クリスマス、盆、正月などに会えたか
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クリスマス、盆、正月など、一般に家族と過ごす時期に毎回会えないというのでは、疑わしいと言える場合もあります。ただし、職業によっては、こういった時期に一切会えなくても、不自然ではない場合もありますし、交際期間が短く、何回か会えないことがあったというだけでは、疑うことは不可能でしょう。
- 結婚歴を知っていたか
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過去に既婚者だったことを知っており、「離婚した」という話を信用した場合です。実際の事例でも、極めて多いパターンで、特に、既婚者の時から知り合いで、「離婚した」という話を信用して交際を開始した場合、「離婚した」という話を軽々に信用したことが過失と認められる可能性があります。他方、出会ったときからバツイチと言っていた場合は、それだけでは、必ずしも、疑わしいとは言えないと思われます。
- 子どもの存在
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幼い子供が存在する場合、既婚者ではないかと疑えることが多いと思います。「離婚した」とか「シングルマザー(ファザー)」という話を軽々しく信用して良いとは言えないでしょう。
最終的には、疑うべき事情があったか否かという観点から、個別事情に応じて判断されるため、自己診断せず、弁護士への相談をお勧めいたします。